おはようございます。今日は雨上がり、気温は上がってきそうです。
さて、先週末、東京で行われた過活動膀胱の新薬における講演会に参加してきました。
土曜日の午後、診療終了後に新幹線で向かい、講演会開催時間15分前に何とか間に合いました。
今回の研究会は過活動膀胱の新しい薬である‘β3-アゴニスト’についてでありました。
もともと、膀胱平滑筋には、自律神経の中の交感神経における受容体:β受容体が存在しています。
おしっこをためるとき(蓄尿時)に交感神経から出たノルアドレナリンという物質が受容体に作用して、筋肉をゆるめ、膀胱に尿が十分ためれるようにします。
β受容体には、β1・β2・β3という、3種類があり、それぞれに割合は種差で違うのですが、人の場合β3受容体がほとんどであることがわかっています。
また、心臓や気管といった体全体さまざまなところにもβ受容体は存在しますが、こちらは主にβ1・β2受容体であり、
β3受容体に特化したアゴニストがあれば、膀胱に選択性の高いお薬になります。
では、なぜ、β3アゴニストが‘過活動膀胱’に効果を示すのでしょう?
講演会の内容を聞いて正直‘??’です。
そもそも、実は過活動膀胱の原因はよくわかっておりません。
通常膀胱が尿により伸展されると、尿意は脊髄を通って脳に刺激が行きます。
まだ、トイレに行かない場合、大脳は脳幹の部分にある排尿させる部分である橋排尿中枢という部分に抑制の指令を出します。
また膀胱の伸展により、脊髄にある部分を刺激して、その刺激は下腹神経という神経を刺激します。下腹神経は交感神経であり、膀胱・尿道に作用して、膀胱を拡張できるように、また尿道を収縮させ、もれのないように尿をためるようにします。
あるとき、排尿しようとした時は、大脳からの橋排尿中枢への抑制刺激が取れ、排尿中枢から精髄を通って、骨盤神経という副交感神経が膀胱に作用して、膀胱を収縮させます。また下腹神経への刺激はなくなり尿道は拡張してスムーズな排尿に移行します。
おしっこをためる・排尿するとはかなり複雑なメカニズムになっています。
過活動膀胱は突然起こる耐えがたい尿意(尿意切迫感)を持つ病気であり、通常頻尿を伴うと定義されています。
この尿意切迫感がなぜ起こるのか?最近までは、今までに発売されている副交感神経から出されるアセチルコリンをブロックする薬(抗コリン剤)がよく効くため、膀胱の上皮に過剰に産生されたアセチルコリンがC線維という神経を刺激して起こるのではないかと言われていました。
今回はβ3アゴニスト、蓄尿時に膀胱をゆるめて拡張させそうだということはわかります。そのため、脳梗塞など大脳からの橋排尿中枢への抑制が効きづらい人には、効果は出るかなと思いますが、
それ以外原因不明の特発性過活動膀胱への効果は理論上ははっきりしません。
講演会では、過活動膀胱の患者さんは膀胱の全体ではなく一部分の平滑筋が異常収縮(micro motion)を起こし、それがトリガーになって尿意切迫感を起こすのではといわれていましたが、正直かなり苦しい説明ですよね。
今後の証明としては、尿意切迫感の考え方が変わるかもしれませんね。ただ、実際の治験データでも排尿回数はもちろん尿意切迫感もプラセボに比べて有意に改善しているようです。
ただ、今後使用していくうちにいろいろなことがわかってくるのかなというのが率直な感想です。
また、β3アゴニストは日本で開発され、全世界に先駆けて承認された日本ブランドの薬です。とても応援したいと思いますが、やはり世界初というのにはかなり制約を設けています。
しばらくの間は専門医が使用すべきとも取れましたので、一般内科の先生方にはしばらくの間はご使用を控えてもらえるように、メーカー側からも発信してもらいたいものです。
講演会終了後、懇親会が行われ、いろいろな先生方と有意義な会合を持つことができとてもうれしかったです。
終了後実は初めて、部屋に入ったのですが、そこから見える東京タワーがすごくきれいでした。